離職マネジメント

従業員が本音でアンケートに回答したのかわかる!データ分析の基礎知識

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私たちは組織の人材育成、組織変革を主な業務としている。その業務を進める上で、最も活用し、重要視しているツールが、従業員アンケートだ。

アンケートと聞けば、お客様アンケートをイメージされる方が多いかもしれない。当記事は、従業員アンケートをメインとしているが、お客様アンケートの作成、実施を検討されている人にも、当記事の内容は非常に参考となるものになっている。

これからご紹介するノウハウは、経営学を学んだことのある人ならば必ず一度は耳にする内容であり、MBAを習得する上で必ず身につけておいた方がいいといえるくらい、マネジメントの中核というべき知識だ。

少し難しいかもしれないが、最後まで読んでいただければ、今までのアンケートに対する考え方が大きく変わり、どれ程従業員アンケートが自社の改善に貢献してくれる偉大なツールであることを認識するようになっているはずだ。

当記事のおおまかな内容としては、「多くの方が誤解しているアンケートについて、どのような従業員アンケートを作成すれば、実際の経営に活かせるデータを取得できるのか?」ということを詳しく書いている。

繰り返しになるが、これはMBAなどで取得するノウハウの一つである。

当記事を読んでいただければ、今までのアンケートとの違いを理解いただき、従業員管理に活用するための、「正しいアンケート作成方法」について深い理解ができているはずだ。

1.顧客・従業員心理学におけるアンケートの位置づけ

従業員アンケートを実施する動機は、大きく2つに分けられる。それは、「従業員は自社に対してどのような不満・満足を持っているのか?」という従業員満足度調査か「自社のどのような部分に課題があるのか?」という自社課題調査の2つに1つだ。

そのどちらの使い道にせよ、多くの方は以下のようなアンケート作成のミスを犯してしまっている。

例えば、顧客(従業員)満足度に関するアンケートを作成したとして、以下のようなデータを取得したとしてみよう。

〇〇に対する満足度に関わる調査結果

多くの方は、上記のグラフデータを見て、「これが普通なんじゃないかな?」と思うのではないだろうか?

しかし、「○○に不満を持っている人は何人です。」や「○○に満足している人は何人です。」など、単なる回答の集計結果を見ても、何も得ることは出来ない。

その理由をこれから丁寧にお伝えしていく。

ではまず、意外に多くの人が知らない、本当の従業員アンケートの使い道とはどのようなものなのかという活用事例から先にご紹介する。

早速、アンケートを上手く活用して、自社の改善につなげている事例にはどのようなものがあるのか?を見ていこう。

2.成果を上げている従業員アンケートの代表的な2つの活用例

従業員アンケートを活用して成果を出しているものの中に代表的な2つの活用例がある。

多くの方は、満足度調査の様に、「満足した・しなかった。」の集計や行動回数といった事実を集めることがアンケートだと思いがちだが、マネジメントの世界では、本来、そういった使い方をしない。

マネジメントの分野で、アンケートの利用方法として、代表的な2つの例だ。

2-1. 書類選考で使う適性検査として活用する

入社試験などでよく使われる適性検査は、アンケートを使って行われる最も代表的なツールだ。

他にも就職・転職リクルートサイトで使われる性格診断など、その精度はかなりのものを誇る。特にSPI検査は、大手企業のほとんどで採用されているほど、広く認知されているアンケートサービスといえる。

2-2. コンサルティング・シンクタンクで販売されている測定ツール

また様々なコンサルティング会社やシンクタンクが提供している〇〇診断ツールや各種分析サービス。このどれもが、従業員アンケートをベースに商品が構成されている。

つまり、マネジメントデータという従業員心理・顧客心理を数値化する上で、アンケートを制するものが、マネジメントを制するといっても過言ではないのだ。

ここまでで、アンケートは単なる回答集計ツールでないのか?ということを感じていただけたのではないだろうか?

3.成果を出すアンケートを作るための基本的な考え方

では次に、成果をあげるために、「どのような従業員アンケートであればよいのか?」という本題部分に入っていこう。

3.1 従業員アンケートで大前提である“人間は嘘をつく”という考え方

アンケートの設計を考える際に大事なのが、アンケートに答える立場に立って考えてみることだ。もし、あなたが、回答する立場に立っていれば、そもそも本音でアンケートに回答するだろうか?

顧客アンケートならば、、、「その時の感情に流されてしまうかもしれない」

  • このお店は好きだから、店員さんが傷つくのは嫌だから、良い点数をつけてあげよう!!
  • 接客最悪!!アンケートで文句を言ってやろう!!

従業員アンケートならば、、、「上司・人事部に回答を見られると思うかもしれない」

  • 人事部や社長が目を通すかもしれない。本音で回答するのは止めておこうか・・・

つまり、人間は、状況に応じて「どのような回答をすべきだろうか?」という質問に対する「正解」を狙おうとしてしまったり、回答する際の感情に流されてしまうのだ。

それをイエス・テンデンシー正解バイアスと呼ぶ。

だからこそ、常に従業員アンケートでは「本音を抜き出せているか?」というデータの「信頼性」を確かめる必要がある。それをしないことには、「従業員アンケートの集計はしたけど、これって信用できるの?」という疑問を拭うことができない。

折角、データを集めたのに、信用できるかわからないので、結局重視はしない。なんてことになれば、なんのためにコストをかけたのかわからなくなってしまう。

そこで、以下のようなアンケートの精度を確かめる手順が必要となる。

3.2 アンケート項目作りのポイントは聞きたいことを細かく聞くこと

その手順とは至ってシンプルなもので、「同じ質問を、内容を変えて複数回聞く」というものだ。専門用語でこの手法を「内的整合性・一貫性(internal consistency)」と呼ぶ。イメージしずらいと思うので、仕事意欲を測定するアンケート項目作成の事例で考えてみよう。

仕事意欲に関する測定項目として、仕事意欲測定尺度(佐野,山口2005)は、精度を保証されているので、この10項目を例として説明することにしよう。

仕事意欲測定尺度10項目の内容
今はこの仕事続けていきたいと思う。
今の仕事は興味を持てる内容だと思う。
毎日の仕事に張り合いを感じる。
今の仕事を自分のものにしている。
自分の担当する仕事に誇りを感じる。
今の仕事は自分にとって満足のいくものである。
今の仕事は性格に合っている。
毎日の仕事にやりがいを感じる。
今の仕事は自分の能力を発揮できるものだと思う。
10 今の仕事から得られる充実感は心地よいと感じる。

上記の項目は、「1の仕事を続けていきたい」という直接的な仕事意欲に関する質問を皮切りに、以下のような仮説が成り立っている。

  1. 仕事に対して意欲の高い人とは?
  2. 自分の仕事内容に興味や知的向上心を持っている。
  3. 日々、仕事を一生懸命頑張りたいと思っている。
  4. 仕事を自分なりに進める工夫も行っている。
  5. 自分の仕事内容に誇りを持っている。
  6. 仕事内容に関する満足がある。
  7. 仕事内容が自分の性格にあったものだと思っている。
  8. 仕事にやりがいを感じている。
  9. 自分の能力を最大限発揮できている。
  10. 仕事の成果に関して、充実感・達成感を感じている人だといえる。

上記の項目は、どれも仕事意欲の高い人に共通するものと思われる要素である。

3.3 同じことを聞いているのに回答がばらついていればおかしい

そしてこのアンケートにおける理想的な集計結果は、以下のようになっていないといけない。

仕事意欲に関するアンケート10項目の理想的な回答について考えてみよう。

1番の「今はこの仕事続けていきたいと思う。」にYESと回答した人は、
・仕事意欲の高い人であるため、残りの10項目の全てで高い得点でなければいけない。
1番の「今はこの仕事続けていきたいと思う。」にNOと回答した人は、
・仕事意欲の低い人であるため、上記の10項目の全てで低い得点でなければいけない。

なぜなら、仕事意欲の低い人が、上記の質問で高得点をとっていれば、それは嘘の回答で、正解を狙いに行った結果だといえるし、仕事意欲が本当は高いのに、アンケートでは低得点だった。ということになれば、現実を抜き出せていないことになる。

つまり、同じ質問を何度も繰り返すことで、「本当に仕事意欲の高い人しか高得点をとれないアンケートを作成する」ということが重要となるのだ。

そうすれば、いくら正解を狙ったとしても、10回連続で正解する人はめったにいないだろう。適性検査で「正直に答えないと矛盾が生じます。」という注意書きがあるのはそういったためだ。

3.4 アンケートの精度を実際に分析してみよう

このアンケートの精度を確認する信頼性分析は、統計ソフトを持っていなくとも、エクセルを上手く活用すれば、自社分析ツールを作成することは十分に可能だ。その方法をこれからお伝えする。

例えば以下の様に【ある聞きたいことに関して】11項目のアンケートを取ったとしよう。

しかしこのままでは作成した11項目全てが「信頼できるデータ」という保証はどこにもない。そこで、【α=項目数/(項目数-1)×(1-(各項目の分散の合計/合計点の分散))】という式を作成すれば、アンケートの精度を測ることが可能になる。

α係数とは、アンケートの信頼性を示す数値であり、あなたがすることは、この数値ができるだけ高くなるように、余計な項目を削ぎ落す作業をするだけだ。

言葉だけではわからないと思うので、実際にやっていこう。

3.4.1 項目を削除していき最もα係数が高くなる組み合わせを探す

以下の表を見て欲しい。以下の表はアンケート項目の組み合わせについて、上記の関数を入力した例だ。

使用項目数 除外項目 α係数
11 なし 0.818
10 11 0.802
10 10 0.837
9 4,10 0.841

全11項目で試した場合のα係数が0.818に対し、NO11を取り除いた時のα係数は0.802と数字が小さくなっている。つまり、NO11の項目は削除すると、信頼性が低下することから、NO11は精度の高い項目であることを示しているので、残すべき項目だと判断できる。

しかし、NO10の項目は取り除くと0.837とα係数が大きくなるので、NO10の項目は精度の低い項目と判断でき、取り除くべき項目だと判断できる。

あとはひたすら、同じ作業を繰り返し、できるだけα係数が大きくなるように最適な組み合わせを探せばいい。

そうすることで、従業員心理や顧客心理を的確に抜き出せる診断尺度(スケール)を開発することが可能だ。そうすれば、「あなた数値化したいあらゆる事象」を数値化し、数値に基づいたマネジメントを行うことが出来るようになる。

*脚注:α係数は最大1.00で各数値に100を掛けてパーセントで表す。例えば。0.837の場合【0.837×100=83.7%】となる。α係数の目安としては、統計学の世界では0.72を超えることが目安とされている。

3.4.2 アンケートを作成する上で大事なのは作成よりも項目の選別!!

アンケート項目は作るだけなら、非常に簡単だ。あなたが聞きたいことを質問文に起こし、集計すれば何かしらの集計結果は作ることは出来る。

しかし、それは単なる回答集計結果であって、会社分析のデータとして使える程の精度であるかはわからない。だからこそ、私たちリサーチャ-・アナリスト・コンサルタントは、「どの項目が現実を抜きとれているか?」という作業までを徹底して行い、良質なアンケート項目の選定することにこだわっている。

当記事のテーマは少し専門的で非常に理解が難しい物だったかもしれない。

しかし、ここまでご説明してきたように、アンケートの精度を分析するノウハウを身につけることが出来れば、アンケートを使ってあらゆる従業員心理、顧客心理を数値化・測定することが可能になる。是非とも、何度も読み返し、自分のものにして頂けることを願っている。

是非、人事部や経営幹部の皆様には、モチベーション・業務知識・状況判断・各種業務スキルをアンケートで数値化し、自社マネジメントを、数値を持って実行することに取り組んでみてはいかがだろうか?

アンケート使いこなす技術を身につけることが出来れば、あなたも一流の経営コンサルタントと同じように、マネジメントを数値化する、測定ノウハウを身につけることができるはずだ。

まとめ.

アンケートというのは、本来、顧客心理や従業員心理と言った「目では見えない感情」を数値化し、心理数値を持って客観的なマネジメントをするための測定ツールだ。

しかし、残念ながら日本では、アンケートは単なる集計ツールとしか認識されていない。だからこそ、日本でのマネジメントの多くが、経験則や経営センス・閃きと言った主観的な判断で行われている。

アンケートを実施する前には必ず、集計したアンケートデータを、どのような分析にかけ、どのような課題を発見するために、どの様な項目を作成すべきなのか?という全体像の設計をしてから、具体的な項目作りをしていくことをおすすめする。

そのために、アンケートデータのどういった加工テクニックがあり、どういった分析手法が存在するのか?アンケートの分析方法への深い理解をすることができれば、自社の課題を発見する測定ツールを使いこなせるようになっているはずだ。

当ブログでは、アンケートを活用した心理数値を作り出す方法を随時公開していく予定なので、是非楽しみに待っていてほしい。

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