「現場のモチベーションを可視化したい」、「業績指標以外の指標を管理の仕組みに取り入れたい」、「人事施策の効果を振り返りたい」など、従業員満足度調査は行う目的は、会社によって様々だ。
従業員満足度の目的が変われば、採用すべき項目やそのライティングが変わる。
- 社員たちの不満を解消し、モチベーションアップの施策に役立てたい。
- 上司の管理方法の改善やマネジメント力アップに役立てたい。
- 人事制度や福利厚生施策の参考データにしたい。
そこで当記事では、自社の人材・組織課題から、どのようなコンセプトで、それにふさわしいアンケートテキストとは一体どのようなものか?を例を交えながら、作成ノウハウをお伝えすることにしたい。
最後までじっくりと読んでいただければ、「とりあえずテンプレート項目を使っておこう。」ではなく、「こういったことを知るために、このようなライティングをする!!」といったレベルで従業員満足度調査を利用できるようになる。
私たちRableで培った全てのノウハウを余すことなくお伝えした、是非何度も繰り返し読んでもらいたい内容となっている。
1.従業員満足度調査とは?
従業員満足度(ES:Employee-Satisfaction)とは、一般的には、会社の不満を聞きだす、いわば組織診断アンケートとしてイメージされている方が非常に多いが、本来は、社員たちに「自社の改善に賛同してもらう」、「成果にこだわってほしい、責任感を持って欲しい」、「自分の作業だけでなく、チーム視点で動いて欲しい」などの行動を変えるための施策だ。
あなたの会社もそうかもしれないが、基本的に改革やスキルアップ、成果主義の導入は社員に反発されやすい。
なぜなら、責任が増えるかもしれない、工程の手間が増える、管理しなければいけない数値が増える、要求目標値が高くなる、など要求レベルが上がるからだ。だからこそ、会社に対する愛着やロイヤリティ(忠誠心)というものが必要になる。
生活残業、役割や責任が増えることの拒否、工程や手順が増える改革への反対、自身の成果に結びつかないチームがまとまらない、など全ての根本的な原因は、末端社員たちが「それは自分の責任・仕事ではない」あるいは「頑張っても無駄、自分にとって損になることはしない」と考えてしまっているからだ。
どうすれば社員たちに「職場・会社に利益をもたらしたい」という意識を持たせる事ができるのか?
それを明らかにするのが従業員満足度調査だ。
参考
以下の記事では、従業員満足度の定義、運用目的、ゴールに関して詳しく解説している。不満を解消するだけでなく、業績を高めるための施策としての基礎部分となるので、従業員満足度に関して、具体的なイメージを持てていない人は、先に目を通しておくことをおすすめしたい。
1-1. 従業員満足度調査を活用した業績改善事例
会社の人材には、昇進したい人・したくない人、スキルアップを目指す人・そうでない人がいる。
だから「あいつはやる気がない。」、「作業に対するこだわり、注意、責任感がない」といったように、いくら指示や注意をしても変わらず、その原因は社員本人にあると考えがちだ。
しかし、良質な組織文化の職場では、能力のあるなし、アルバイトと正社員の違い、新人社員など勤務年数の差、役職の有無に関係なく、全員がより高いレベルで働こうとしている。それは、あと数ヶ月で退職が決まっている社員でもそうだ。なぜなら、給与や待遇に関係なく、「上司・会社に感謝しているから」、「職場に迷惑をかけたくないから」、「自分の価値を下げたくないから」といった感情が持てているからだ。
満足度を上げることや不満を解消することそのものが目的になってはいけない。
従業員満足度の改善はあくまで業績向上の1つの手法であり、それは「業績目標のためには、○○の不満の解消、□□の満足の提供が必要だ」という成功ストーリーがあらかじめ見えていないといけない。
参考
以下の記事では、従業員満足度向上の取り組みを通じて、組織改革・業績改善につながった良事例を紹介している。従業員満足度調査を実施することをゴールとせず、業績改善につなげるためには、目的を明確にしてからES調査項目の中身を決める事が重要だ。
1-2. 従業員満足度(ES)調査を行う目的
従業員満足度を自社の課題や業績目標と切り離さず、以下のような具体的な課題と紐付けよう。
- 社員たちに○○の考えを持ってもらうには、どうすればいいだろうか?
- 社員たちに□□ができる、△△を自発的にさせるには、どうすればいいだろうか?
- 社員たちがやる気にならない理由は、○○だと思う。
「○○ができないのは、□□が原因で、それを解消すれば、上手くいくはずだ。」
マネージャーや経営層であれば、人材に関して上記のような課題と理想の状態に関するイメージを持っておられると思う。そして、上記のことを数値で可視化するのが、従業員満足度調査の目的だ。
上記のことをまとめると、従業員満足度調査の実施目的は大きく3つに要約できる。
- 社員たちの意識・行動に変化は見られたのか?というマネジメント成果の可視化
- 社員たちのモチベーションの強さはどの程度なのか?というやる気の数値化
- 社員たちの不満の種類や気持ちの程度といった不満の可視化
2.従業員満足度調査全体像の設計
従業員満足度施策を成果につなげるためには、最初に明確なリサーチ・クエッションを立てる事が重要だ。いきなり具体的な項目ライティングに入る前に、自社の課題は何で、どういった目標があり、目的から逆算して、今回どのような質問構成でESを作り上げるのか?
ES全体の設計をしてから具体的な項目ライティングをするように心がけよう。
2-1. マネジメント成果を可視化するために従業員満足度調査を活用する
従業員満足度調査や組織サーベイなどのアンケートを用いた定量分析をする目的の1つが、非財務データの作成だ。
自社の人材資源の質は、売上などの財務データだけではなく、「○○の考えを持てている、□□の行動をとれている」などの行動・態度面で捉えたいというニーズは非常に高い。財務数値はあくまで結果に過ぎず、過程をマネジメントしなければ結果は変えられないと感じているからだ。
以下のような項目をリサーチすれば、社員たちの目標達成への意識度や反省、改善意欲が高まっているかどうかを数値化する事ができる。
1.結果の内省
自分の行動の客観的な振り返り、成果ではなく、掲げた行動の習熟度があがったのかがポイント |
与えられた業績目標達成を必ず達成したいと思っている。 |
行動の良かった点の振り返りが習慣化されている | |
行動の悪かった点の振り返りが習慣化されている | |
意識したポイントが出来たかの確認が習慣化されている | |
2.原因帰属
掲げた行動目標が業績に紐づいているかを検討。行動に関する効果を分析 |
業績変化と行動熟練度の関連性を考えられる |
意識した行動と業績の関連性を考えられる | |
行動した結果反応から新しい課題を発見できる | |
業績へのインパクトファクターを常に考えている | |
3.次回への反省
次回も同じ行動を実践するのか、あるいは他の行動目標を掲げるのかに関する意思決定 |
繰り返してはいけない行動の決定 |
次回も継続したい行動の決定 | |
次回に意識する行動改善点の決定 | |
他の習得目標への変更 |
マネジメントの質が自社の課題で、社員たちの考え方の変化や行動は変化しつつあるのか知りたい。という場合は上記のような項目を質問項目に取り入れよう。以下の記事では、それぞれのスキルに関して、どういった切り取り方があるのか?に関する紹介を行っている。どういった項目を取り入れるべきか悩んでおられるのであれば参考になると思う。
参考
業務スキル・パフォーマンスに関する質問項目リスト
対人コミュニケーション・プレゼン・伝達能力に関する質問項目リスト
職場・チームマネジメントに関する質問項目リスト
2-2. 社員モチベーションアンケートとしてESを活用する
2つ目の目的は、モチベーションの可視化だ。特に離職や人手不足に困っている。あるいは、優秀な社員の流出を抑えたいという場合、個別面談を実施したり、上司からのフォローをさせる事が重要となるが、いつ、誰に対して行うべきかというタイミングが難しい。
全ての社員に定期的にやるというのは非効率的だし、業務負担が大きすぎるからだ。
そこで、モチベーションの強さを可視化し、どの社員がモチベーションが低下しているなどの緊急性と具体的にどのような悩み、不満、不安を抱えているかが事前にわかって入れば、どういった内容の話をし、どういったフォローをすべきなのか?が明確になる。
そして総合的なモチベーションと個々の不満とは同じではない。ある不満が高くても、「やめたい」や「この仕事を続けられる自信がない」などの感情につながるかは別であるし、不満がなくてもある日急に転職するということがある。
以下の記事では総合的な満足度を測定するための要素を紹介しているので、やる気の強さを可視化したいのであれば是非取り入れてみて欲しい。
2-3. 社員満足度調査として活用する
自社の課題とゴールを明確にし、社員たちにどのような考えを持ってもらい、どのような行動をとらせたいのか?に関する項目を作成すれば、それに関連する不満をリストアップしていこう。
繰り返しになるが、従業員満足度は、やみくもに社員の満足を高めたり、不満を解消するのではなく、ゴールから逆算して、「こういった不満のせいで、このような考えをもつことや行動をとらせることを阻害している」あるいは「こういった満足をするからこそ、こういった考えをもてたり、行動を積極的にするようになる」といった目的がなければいけない。
課題や目的が変われば、それに関連する満足や不満の種類も変わる。
だからこそ、先にマネジメント課題とこれから取り組みたいマネジメント施策で目指す将来の姿をイメージできていないといけない。将来の姿は、業績数値でもいいし、人事考課に取り入れている態度・行動基準であってもいい。「○○を達成するために、△△の満足度を上げる」というマネジメントミッションを発見するために従業員満足度調査はデザインされていないといけない。
以下の記事ではそれぞれ会社に対する不満、職場(上司)に対する不満、仕事内容(業務環境)に対する不満を紹介している。どのような不満を聞きだすべきか?を検討するに当たり参考になると思う。
参考
会社・待遇・福利厚生に対する不満項目例
上司・職場に対する不満項目例
仕事内容・裁量権に関する不満項目例
近日今回予定
2-4. ES企画書例
ESを企画する際に以下のような企画書を必ず作成するようにしよう。以下の企画書はわかりやすいように概要を書いたものになる。
1.問題意識
現在、○○部では、業績目標の達成において、△△の課題があります。なぜなら、社員たちに□□の部分において意識、行動の差があり、そのために、○○が発生しており、その課題が根本的な原因であると考えます。 |
2.目指す姿
課題を解決し、○○の業務数値を改善するためには、社員たちに□□の意識、あるいは、△△を自発的に考えられるようになる事が必要です。 実施するESテストにおいて、以下の行動・態度項目が必要になります。 ・職場全体の業務成果に対する責任感・貢献意欲10項目 これらの項目と実際の財務指標との関連性を分析し、業績を高めるために必要な要素を特定します。 |
3.関連満足度
自分の担当業務以外への協力行動、職場での連携行動、貢献行動を阻害する心理として以下の事が関連していると思われます。 1.同僚の働きぶり、仕事に対する姿勢への不満10項目 上記の意欲項目と関連付けることで、どの不満がチーム行動を阻害しているかを特定し、ES結果を活用して、チームワークを高めるための施策立案、資料として活用します。 |
自社の課題は何で、それはどうすれば解決できるのか?それを知るためのツールが従業員満足度調査だ。そしてなぜ徹底的なテーマの絞込みをしないといけないのか?それは項目ライティングの品質に関わるからだ。
3 従業員満足度調査アンケート質問項目ライティング
目的なく、あらゆる不満を聞きたい、満足度を調査したいというアンケート項目は、単なる組織診断ツールになってしまう。
3-1. 従業員満足度調査項目案:サンプル例
では例えば、「上司に対する満足度を聞きたい」、「現場のマネジメント力を高めよう」という要望が出てきたとしよう。
しかしそれをそのまま項目ライティングしても「あなたは上司に満足していますか?」や「上司のマネジメント力について、あなたはどのような印象を持っていますか?」といった抽象的なものになってしまう。
もちろん、会社や業務内容によって管理職に求める力は変化するが、一般論として考えてみてもマネジメント力の要素として以下のようなものがあげられる。
1.管理者として必要な倫理・道徳
指示・指導・管理者として身につけていけない人間性。経営倫理・哲学と呼べる部分 |
振る舞いや態度の謙虚さ |
言葉遣いの丁寧さ | |
感情的衝動の抑制 | |
行動変化志向 | |
ロールモデルとしての意識 | |
2.部下に対する姿勢・想い
部下に対する影響力を持つためには、部下の信頼を重ねていく事が重要 |
誰に対しても親身に接する姿勢 |
部下の成功に対する喜びの共有 | |
部下と一緒に悩める一体感 | |
出来るまで面倒をみる責任感 | |
3.評価の可視化・言語化
自分を見てくれている人には、好感を持ちやすくなる。それを言葉として口にする事が重要 |
仕事ぶりに対する感謝 |
仕事ぶりに関する要望 | |
課題に関するアドバイス | |
発揮して欲しい、任せたい役割の伝達 | |
4.論理性・根拠・一貫性
指示や指導、共有する際には、賛同が必要。それを得やすくするために必要な技能 |
話の具体性、高文脈性 |
論点の明確性・一貫性 | |
話の論理性・論理展開力 | |
内容の信頼性(根拠) | |
5.ヒアリング・コーチング力
報連相はさせるものではなく、引き出すもので、それを促すために必要な技能 |
相談される人間となるという理念 |
話の傾聴姿勢・態度 | |
相手の話を引き出す質問力 | |
相手の話への相槌、リアクション力 | |
6.ビジョン伝達・ケース説明
相手の気分を高揚させ、自分の意見に賛同させるための会話誘導技能 |
ケース、例え話の上手さ |
スモールステップでの賛同 | |
未来、目標達成時の具体的なイメージ | |
目標の現実性演出力 | |
7.指揮能力
指示に従ってもらう、協力してもらうには、指示・判断が適切でないといけない |
指示内容の一貫性 |
指示内容の適切性 | |
指示の迅速性 | |
トラブルへの反応の速さ | |
8.指導能力
部下の成長、能力は指導の質に左右され、指導者が自身の指導力を高めることでその改善を目指す |
指導における成果意識 |
指導のポイントの明確さ | |
成長段階に合わせた指導 | |
辛抱強い指導の継続 | |
叱った後のフォロー | |
9・管理力・把握力
指示・指導を出す人間は目の前のことだけでなく、全体的・週(月)次ベースの広い視野が必要 |
現場状況の把握力 |
進捗状況の把握力 | |
人員状況に合わせた作業目標 | |
人員調整・シフト組みの適切性 | |
納期・工程管理の上手さ | |
10.採点力
裁量権・評価権を持つ社員は、自身が採点者とふさわしい技能を身につけなければいけない。 |
主観を排除した公平・平等評価 |
環境変動を考慮した客観的評価 | |
成果に基づく客観的評価 | |
評価の妥当さ、相対的評価 | |
成果に現れない貢献度を考慮した評価 |
テーマを絞れば、上記のようにより細かく質問項目を作りこむ事ができるし、逆に組織診断テストのようなものであれば、項目数が多くなりすぎるため細かく聞く事ができなくなる。
だから最初に何を解決したいのか?何を知りたいのか?を決め、1つのテーマをどれだけ多くの項目に分解できるか?が項目の質を左右する。
上記の例であれば、マネジメント力の違いはどこにあるのか?に注目し、能力、姿勢、考え方、経験の違いによってどういった差があるのか?を列挙した例になる。あれもこれもと様々な視点で1つ1つの情報力が薄い項目を作るより、1つのテーマに絞り、より具体的な項目を作成するほうが、施策立案や自社改善に役立つのは間違いない。
3-2. 従業員満足度アンケート項目作成のコツ
ではここからは質問文のライティングに入っていこう。
あなたの会社でも従業員満足度調査を実施したことがあるかもしれない。その際、従業員満足度調査テンプレートや社内アンケートテンプレートなどのキーワードでWEB検索し、そのままの内容を利用した人もいるのではないだろうか?
3-2-1.従業員満足度調査項目例文 | 失敗するアンケートと成功するアンケートの違い
以下に2つのアンケートを用意したので、実際にどの選択肢をつけるか考えてみてほしい。
■ 従業員満足度調査で失敗するテンプレートの紹介
まず上記の例を見てみよう。あなたは何をもって、満足・不満足と判断しただろうか?
プロジェクトの進捗を管理する能力だろうか?それとも、部下への態度だろうか?または、上司の指示が適切かどうか?このような中から、どれかをイメージして「上司の指導は良い」や「上司の発言はダメだ」と判断したはずだ。
それは直近の出来事で左右されるかもしれないし、人によって重視するポイントは変わる。
つまり、上記のアンケートを職場で取ったとしても、その回答結果を見た上司は、何を改善すれば良いのか見えてこない。回答者やタイミング、その時の感情次第で、スコアがころころ変わるような問いになってしまっているからだ。
■ 従業員満足度調査がマネジメントに活用できるテンプレートの紹介
上記の従業員満足度項目は、抜き取る対象が非常に具体的・限定的になっている。
この問いの回答データを見れば「根性論や精神論で指導している上司だ。」という回答が多ければ、そのような上司に対して、あるいは上司自身が自分のデータを見て「合理的で皆が納得できる指導を心がけなければいけない。」というように、管理職自身が身につけなければいけないマネジメント課題が見えてくる。
脚注1:論文で実証されたスケール項目を引用して実施している人もいるだろうが、それはあくまでその現象(概念)を観測するための項目であり、実務で活用するためのものではない。概念そのものを否定しているわけではないので、そこは誤解しないようにしていただきたい。
3-2-2. POINT2:悪いスコアを抜き取ることのできるライティングにこだわろう
また管理職がデータを活用するためには、「部下たちがどういった気持ちなのか」を的確に抜き取れるものでないといけない。次に、下記の項目を見てほしい。
あなた自身も回答してみよう。
上記の項目は「今の業務に自信が持てているかどうか低下しているかどうか」、というネガティブな概念を抜き取るものだ。
こういった問いも、ネガティブな回答をしやすい工夫を施すことで、低得点の選択肢を選びやすいようにしている。
(自分には向いていないかもしれないと思うこともある。)という回答をした社員には、その人が積極性を発揮できない、失敗するかもしれないという恐怖や不安をどれだけ感じているかがわかり、○○さんには、□□のフォローや対応を施す必要があるという現場行動に直結することが見てわかるはずだ。
積極性を発揮させるために、なぜ積極的になれないのか?という部分をまず知らねばならない。
ありふれた質問項目だと思うかもしれないが、上司が部下に面談をしている会社も多いと思うが、部下は上司に対して素直に、(自分には向いていないかもしれないと思うこともある。)と回答できるだろうか?
ネガティブな回答も引き出すうえで、従業員満足度調査は非常に効果的なツールあるといえる。
3-1-3.POINT3:部下視点にたった項目ライティングにこだわろう
また人の行動には必ず行動原理が存在する。
以下の項目にも回答してみよう。
この項目は積極性・自発性を抜き取ることを目的としている。
この項目では、左側の選択肢(未熟な間は上司の指示や指導を聞き、無理に頑張る必要はない)を選んだ場合をイメージしてみよう。
積極的になれない理由を「自分の知識や経験、能力に自信が持てないこと」と感じているため「先輩や上司の指示以外のことをすべきでない」と思っている人が選択する項目だと仮説を立てて作成している。
ここで伝えたいことは、回答選択肢の気持ちが絶対に正しいのか?という話ではない。どちらの選択肢に寄った気持ちになるのか?ということが重要だ。
単純に、積極的に動かない人は、そのよう思ってしまう理由が存在するということだ。前節の項目では感情面での理由を引き出し、今回の項目では合理的な理由を引き出している。
様々な視点から、部下に達成させたい行動を阻害している要因を抜き取ることができれば、管理者たちは「その感情をなくすためのサポートや指導をする」ということをしなければいけない。という事に気づくことができるようになる。
また、様々な角度からの項目データを見れば、その部下に合った対処法を知ることができる。
脚注2:項目ライティングが正しいかどうか、仮説があっているかについては、データを分析してみなければ、必ずしも当たるとは言い切れません。Rableでは様々な統計分析を行い、厳選な選定を行い、クライアント企業で有意とみられた高品質な項目データだけを提供しています。
3-2.良質な従業員満足度調査は、集計だけでも充分に価値がある
従業員満足度調査は、単純にデータを集計するだけでなく、そこからさまざまな統計分析処理を行い、項目選定、グループ化、スコアリング、モデル作成などを行っていくが、高品質なアンケートは、集計データだけでも十分価値ある内容となる。
3-2-1職場ごとの管理者の傾向が簡単にわかる
良質な従業員満足度調査を詳しく分析していけば、自社のマネジメントの傾向が見えてくる。具体的には、データの散らばり(得点の分布)をみることで、以下のようにデータを区分しよう。大きく3つのパターンに分けることができる。
パターン1:選択肢が1~8で均等分布している。
- 社員によってスコアがバラバラの項目 → ノウハウ化されていない要素
上記のような回答結果の場合、自信を失っている社員と自信のある社員が半分ずつにわかれている。ここから、何がわかるだろうか?
これらは、指導方針がノウハウ化されておらず、出来る社員は勝手に学び自信を得ているが、ミスする回数が多い社員などは、自信を失っていることがわかる。
指導マニュアルに、部下に自信を持たせる方法やそういった観点の評価があれば、全員をやる気にさせることが管理職の仕事であり、役割であるという意識を浸透させることが可能になる。
パターン2:部署や店舗間でスコアの特徴がみられる項目 → マネジメントで変化する要素
上記のような回答結果だった場合、A店舗の管理者は根性論や精神論を振りかざして指示・指導していることになる。
一方、B店舗は合理的な指導を行い、部下が納得するような指導をしていることがわかる。
このようなデータがあれば、どの管理職のマネジメントが適切なのか?ということが、一目瞭然でわかるようになるだろう。
パターン3;全体的に同傾向がみられる項目 → 自社の制度や文化として浸透している項目
上記のような回答結果だった場合、会社の方針として、積極的に上司に質問をして、自ら進んで学ぶことを指導していることが伺える。
現場では、ほぼ、全ての社員が自分から質問しにいく環境になっており、上司も部下からの質問に丁寧に返答している様子が伺える。
つまり、そのような社内文化が形成されている。ということが言えるだろう。
スコアの分布によって自社がすべき施策は以下のものとなる。
- 人材育成・新たな施策を行い、それを実行できる社員を増やす。
- その項目を人事評価に取り入れ、それを実践できる管理職を増やす。
- 既に実行できているので、新たな施策は必要なし
このように、リサーチをすれば、自社の人材状況を把握でき、自社に必要な取り組みは何か?という事を知ることができる。
3-2-2.回答の結果を指導・指示業務に活かす
回答結果から、作業能力や成果の質が悪い理由を知ることができる。
例えば、営業成績が悪い従業員は、顧客の話を聞くことよりも、自社のPRに専念している場合などは、マニュアルに書かれたセールストークをいくら学んでも成果を出せない部分だ。
上記の項目で認識に対する質問をすれば、なぜそのような行動をしてしまうのか?を知ることができる。
あなたの会社は、どちらの考え方を推奨するだろうか?この質問では、どちらが正解で、どちらが不正解ということはなく、正解は企業コンセプトによって変わる。
大事なのは、どちらの選択肢が良いかどうかではなく、「会社の経営方針にマッチする社員を狙って育成することができるか?そうした考えを持つように指導する育成ノウハウがあるか?」だ。
従業員満足度項目を作成していくことは、自社の人材戦略・人事評価の基準を整備し、それを仕組化するためのファーストステップであるといえる。
3-2-3.管理職評価に活用できる
星野リゾートの例にもあったように、社員の行動の方向性や質は、管理・指示・指導が変われば、それに合わせて変化する。
質の高い従業員満足度を行えば、社員たちの認識や不安に思っていること、不満に思っていることを解消できているか?を数値化できる。
そしてそれを人事評価に取り入れることで、管理職たちがそれを真に達成するように動かすことを可能にする。
8.従業員満足度は、従業員の間違った認識を可視化することに使えるということ。
9.従業員満足度は、離れた場所でも、現場の状況を把握するために使えるということ。
10.従業員満足度は、回答結果からマネジメント能力を育成するツールになるということ。
11.従業員満足度は、最終的には評価制度に組み込むこむことで仕組化が達成されること
まとめ:従業員満足度に対する間違った認識を正そう!
当記事で書いた従業員満足度とは、RABLE式の従業員満足度調査の方法について、何が今までの方法と違うのか?ということをお伝えしてきた。
日本ではマネジメントに対する認識が非常に低く、現場主義、業務スキルの高い社員に依存した感覚マネジメントに頑なにしがみついている。
しかしながら、少子高齢化・グローバル競争の激化が進み、少数の社員で高い成果を出すという生産性の見直しをしなければ今後生き残っていけないということは誰の目から見ても明らかだ。
ぜひ、当記事に書かれている間違った認識を正し、あなたの会社を飛躍させるために参考にしていただきたい。