離職マネジメント

従業員を辞めさせてはダメ?辞めさせるべき?競争力を高める離職率の使い方

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売上は上がっているのに、利益が増えない!という状況になれば、「固定費を削減して利益体質の改善を図りたい」と多くの人は考える。そこで、RABLEではクライアントに対して、以下のような質問をすることがある。

  1. 固定費の中でも設備や外注費などを大幅に下げることはできますか?
  2. 固定費の中でも社員数や給与などの人件費を大幅に下げることはできますか?

もちろん、設備や外注費を下げる企業もたまに存在するのだが、固定費を削減するために「人件費を大幅に削減していく=リストラ」という考えに至ることがほとんどだ。しかし、無計画でリスクを把握せずに実行するリストラは、企業の生産力や競争力を低下させかねない。

また当カテゴリのブログでは、【離職率の改善】をテーマに扱っているので、「従業員を辞めさせてはいけないのか、辞めさせるべきか?どっちなんだ?」と感じられた方が必ずいらっしゃるかもしれない。

しかし、良く考えてみて欲しい。「会社の生産性に貢献しない辞めさせたい従業員は辞めさせて、よく働いてくれる従業員には働き続けてもらう。」という【従業員の離職をコントロールする】ことができるならばいかがだろうか?

今までの生産性を下げることなく、人件費率を下げるという2つの目的を達成することができる。

今回のブログでは、従業員の離職をコントロールすることで、売上に占める人件費率を下げるという考え方をご紹介する。会社の生産性を下げずに固定費を削減するということに目線を置いているので、是非一読して頂く価値のある内容になっていると思う。

1. 固定費削減と聞けば誰もが考えるものが人件費

固定費で大きな割合を占めるのが、人件費であることは誰もがおわかりのことだろう。設備や外注費なども大きなコストの1つだが、この要素を削ってしまうと、自社競争力を失ってしまいかねない。

そのため、「会社の売上が下がる=リストラを検討する。」という流れが多くの人がイメージする人件費削減の流れであると思う。

まず大きなコスト負担の要因である「人件費をどのようにして捉えるべきか?」ということから考えてみよう。

1.1 年功序列制度では勤続年数に比例して給料が上がっていく

日本の多くの企業では、基本的な給与体系は年功序列制度に基づいている所が多い。現在では、外資型の成果主義が導入されている企業も増えてきたが、成果主義という考え方は人との和を大切にする日本人の感性や文化にあまり馴染みにくい。

その年功序列制度が、人件費が高くなる原因の1つになっていることは言うまでもない。下の図をみて欲しい。


厚生労働省が公表している正社員労働者の賃金カーブ

上記の図を見ると、年齢に応じて給与賃金が入社時と比べ2倍から3倍になることがお分かりになるはずだ。

給料は年齢に比例して上がっていく。しかし、退職者がゼロで、会社の売上が上がらなかった場合はどうなるだろうか?その場合は、売上人件費率だけが上昇し、どんどん経営が苦しくなっていく。

しかし、ある程度の給料を払わなければ、社員の不満が爆発し、同業他社に人材が流出し、慢性的な人手不足に陥り、最終的に廃業を余儀なくされてしまう。だが、従業員に払える金額は一定だ。その解決策として、支払う従業員の頭数を減らすリストラが実行されるのだ。

1.2 人材流動性が高い方が人件費が抑えられていいという意見

上記の理由から、人材流動性が高い方が良いという主張が出てくることになる。人材流動性とは、中途採用者などの労働市場を活用し、社内の人材の入れ替えをどれほど活発に行っているかに関する指標だ。

確かに、社内の人材が流動的であれば、年功序列型による賃金上昇も抑えられ、トータルの人件費を大きく削減することが可能になる。

しかし、果たして本当に人材流動性が高いことは本当に良い事なのだろうか?

1.3 人材流動性は生産性が上がる企業とそうでない企業に分けて考えるべき

しかし、これまでに述べてきた話の条件は、「売上が変わらない」という前提に基づいていた。以下の図をみて欲しい。

左記の図は、勤続年数と1人の従業員の生産性の変化を表したものだ。この図をみれば、給料の上昇金額以上に生産性が高まっていることを意味している。つまり、経験や知識、ノウハウが重要視される会社の場合では、社員の離職による人件費削減効果よりも売上低下効果の方が大きく割に合わないということになる。

社員の定着率に関する詳しいことは、以下の記事で詳しく説明しているので是非そちらにも目を通してほしい。

人材不足の企業は必見!社員定着率の向上と採用コスト回収のアイデア

そのため、「離職率が高くても大丈夫だ。」という意見の保証にはならない。安易に短期的なコストカットに走り、自社の競争力を低下させることだけは絶対にしてはならない。

1.4 人材流動性が高くても自社の競争力を保つための4つの条件

更に人材流動性が高くても好業績を保つためには以下の条件を満たさなければならない。

  • 常に自社の求める水準以上の人材を採用できる採用集客力がある。
  • 採用した人材の仕事の質が一定水準以上に教育できる仕組みがある。
  • 業務の引き継ぎや報連相のスムーズにできるコミュニケーションツールがある。
  • 人材の流動性が高くても、チーム単位で行動できる組織求心力がある。

人材流動性が高いという事は、いつ人が辞めるかわからないということであり、常に人員を任意のタイミングで補充できる採用力がないといけないし、採用した人材を即戦力化できる仕組みもないといけない。

また、メンバーの入れ替えが激しい為、きちんとした業務連絡システムがなければ、意思疎通がうまく取れず、スケジューリングが上手くいかない事が多くなる。更に会社への帰属意識が薄く、組織の指示に従わないかもしれない。

そのため、上記の4つのシステムを上手く完備していなければ、サービスの質は低くなり、自社の競争力が低下するはめになる。コンビニ業界の様に、短期アルバイトだけでもお店が回すことができるビジネスモデルの裏には、高度な人材管理システムが存在しているのだ。

2. 離職マネジメントの運用ノウハウ

ここまで人材流動性比率が高いことのデメリットだけを述べてきた。しかし、年功序列制度のみでは、売上人件費率が高くなってしまう。この章では、自社競争力を維持しつつも、具体的な人件費削減方法について説明していく。

2.1 離職マネジメントがアンダーコントロールにあるかどうか

ここで一度頭をフラットにしてマネジメントについて考えてみよう。マネジメントとは本来、自分の好きなタイミングに、好きな対象に対して、任意でする行動だ。

離職率に関してもそうだが、離職率を下げると聞くと「仕事が出来ない人ばかりが残ったらどうするんですか?」と聞く人が非常に多い。

しかし、良く考えてみて欲しい。別にマネジメントを全員にする必要はどこにもない。

あなたが引き留めたい部下に対してだけすればいいだけだ。

上記の図は右側と左側では大きく違う。
なぜなら、問題が発生した時、あるいは、優秀な部下が辞めそうなときに対処できないからだ。離職は、基本的には優秀な人材程辞めることが多い。その理由は簡単で次の転職先が直ぐに見つかるからだ。また独立を希望する人も多い。

そのため、離職マネジメントのスキルがあるかどうかということは極めて重要だ。そのようなマネジメント能力があれば、会社の状況に合わせて離職率を上手くコントロールすることが出来るようになる。

離職率の具体的な計算方法は、以下のサイトを参考するようにしてほしい。

効果的な離職率の計算方法と経年変化がひと目でわかるグラフの作り方

2.2 離職率を期間別・属性別に設定する

離職率カテゴリ 目標数値 実測値
社内全体離職率 10% 10.8%
勤続10年以内の離職率 5% 7.8%
勤続10年以上の離職率 10% 12.4%
離職マネジメント実施者の離職率 3% 4.2%
離職マネジメント非実施者の離職率 15% 15.2%
プロフェッショナル層の離職率 15% 17.2%
マネージャー層の離職率 5% 5.9%

全体的な離職率は、あくまで全体の数字でしかない。マネジメントする上で重要なのは、管理する対象をきちんと明確にすることだ。そうすれば、自社の課題と行動の進捗の結果、これからの改善案を計画する大きなヒントになる。

離職マネジメントの進捗を評価する上で以下の3つの切り口がある。

2.2.1 勤続年数期間ごとの離職率

勤続年数ごとに離職率を出すことは極めて重要だ。特に入社3年以内の人材定着率が低い場合だと、職場の人間関係の悪い要因として、派閥が存在しているか、新入社員に対して現場のフォローがないという事が考えられる。また採用設計そのものがミスマッチである可能性もある。

逆に勤続10年以上の比率があまりに低すぎると、人件費が高くなる危険性もある。この2つの問題は、会社全体離職率だけでは見えてこない数字だ。採用の問題、人件費の問題、この2つの課題を明らかにするためにも、期間別に分けて出しておくことが重要だ。

2.2.2 離職マネジメント実施者ごとの離職率

また、離職マネジメントの実施者と非実施者ごとの離職率も出しておきたい。そうすることで、離職マネジメントの成果を知る事が出来るからだ。この2つの数値の差があまりなければ、マネジメントが上手く機能していない事を表す。

また離職マネジメントを実施していないのにも関わらず、離職率が低いような場合には、生産性の低い従業員がいかに人件費の高コストを生み出しているのかを知る材料にもなる。その対策を含め、きちんと分けて出しておきたい。

2.2.3 マネージャー層とプロフェッショナル層の離職率

また、マネージャー層とプロフェッショナル層で分けておくことも効果的だ。プロフェッショナル層とは、プログラマーや開発・研究者、営業職も含む。この層は、高い専門スキルを持つので、転職活動がしやすい層でもある。

一方、マネージャー層は、会社に依存する傾向が強く、専門的なスキルを持たない。また、会社の経営陣とも距離の近いところにいるので、離職率が低い傾向にある。

会社のノウハウ流出や競争力低下を招くことを防ぐためにも、プロフェッショナル層の離職傾向を常に把握できる状況にしておくことは極めて重要だ。

2.3 離職するまでにきちんと人材コストが投資になっていればいい

従業員属性ごとに離職率を算出できていれば、それぞれの平均勤続年数を知る事も可能になる。その平均勤続年数を基に、以下の様な人材コスト回収期間を設けよう。

そうすれば、離職されても赤字にならなくて済む。必ず平均勤続年数が上記のグラフの青色の部分を越えるように離職マネジメントを行っていこう。

2.4 平均勤続年数に基づく人員配置・育成計画を綿密にしていれば慌てずに済む

綿密に平均勤続年数をベースとした人員配置計画をしていれば、もうすぐ辞めそうな社員は誰かを事前に把握することが出来るようになる。そうすることで、今年は何人中途採用を行い、新卒で何人とるべきかを試算できる。

その試算がなければ、単なる頭数の採用にしかならない。離職について徹底的に考えることで、精度の高い人員配置・採用計画を設計することが出来るようになる。

つまり、離職マネジメントは、人材の採用・育成・管理における肝なのだ。離職マネジメントがきちんと機能していなければ、いくら教育システムを整備しようと絵に描いた餅で終わってしまう。

離職をアンダーコントロールにおいてはじめて、人材計画がビジョンだけで終わらず、達成可能な現実的な目標として実行可能になるのだ。

3. まとめ

離職マネジメントは、会社の生産性と固定費削減の双方に影響する最も重要なマネジメントの1つだ。また、当記事では触れていないが、会社の人材教育の成功の命運を握るカギでもある。なぜなら、いくら人材を育成しようとも辞められたら意味がないからだ。

そして、他のマネジメントでもそうであるが、離職マネジメントを考える上で最も重要なことは、誰に対してマネジメントするかを考える事だ。

そうしなければ、「離職はあってもよい」VS「離職はない方が良い」という、そもそも論で話が進まなくなってしまうからだ。

必ず、どのような問題の、どのような場合の時、どのようなマネジメントをするか?というカテゴリ別、状況別のマネジメントをそれぞれ考えるようにしてほしい。

そうすることで、会社の状況に合わせて、人材の補充・育成・引き留め・放出を計画的に行うことが出来るようになる。当記事が、人的資源管理のコアとして離職マネジメントについて深く考えるきっかけになれば幸いだ。

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  1. 1.離職人数と採用人数を出して社員数の増減を確認する方法

  2. 2.新入社員の1年以内・2年以内・3年以内の離職率を確認する方法

  3. 3.勤続年数10年以上の社員が何人離職しているのか確認する方法

  4. 4.営業成績の良い社員が、どれだけ離職しているのか確認する方法

  5. 5.どの管理職の元で働くと離職する社員が多いのか確認する方法


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