モチベーションの強さを測ることは簡単ではありません。なぜなら、心理と行動は紐づいていないといけないからです。
自分ではやる気はあると思っていても、実際に自分から動くことがない。という話は良く聞きます。
客観的にモチベーションを見るためには、ある質問の得点が高い人は、実際に自分から行動していることが多い。という因果関係が大切です。
そこで今回の記事で紹介する項目では、「実際に自分から動くかどうか?」という事を切り抜くことを目的としています。
行動につながらないモチベーションでは意味がない
モチベーションを可視化するうえで、大事なのは、思っているだけでなく、実際に自分から動くかどうか?という視点が必要不可欠です。
そこでこの項目では【Proactive Behavior:行動の主体性】を測定しています。
行為は主体と客体の2つに分けられます。
主体:自分が解決する、自分で考える、自分から動く、などの能動的な行動
客体:指示を待つ、誰かにやってもらう、などの受け身的な行動
このように能動的に行動するか、受け身的に行動するか?を切り取ることで、測定したモチベーションが実際の行動につながるか?という行動の再現性を測ることを目的としています。
主体的な行動は解決志向から生まれる
そこで行動の主体性の強さを測るためにこの項目では、以下の質問をしています。
この質問では、問題の解決において自分で解決したいと思い、自分から動くのか、他人に解決を任せるかのどちらを選択するかを測定しています。
詳しい解説を見ていく前に、もう一度、自分はどの選択肢を選ぶか考えてみましょう。
<仕事に慣れるまでは、上司や先輩に頼りたいと思う。>
まずは、こちらの選択肢を選んだ方の心理を解説しましょう。
この項目を数値化するために、低得点の選択肢として、「現在の自分では解決が難しい」という心理を抜き出す設計を行い、以下の思考を誘導しています。
- 今の自分の知識レベル、能力、スキルで解決することは難しい
- だから、自分でできないのは仕方ないのないこと
- 先輩や上司を上手く頼ってやってもらおう
自分で考えて行動したり、工夫するためには、基本的な業務知識、経験、優先順位などの土台が必要です。何が正解か不正解か判断すら付けられない状態で、成果を出すことはできません。
成功への道筋が見えないからです。
こちら側の得点が強くなればなるほど、まだまだ自分は未熟で自分の判断や知識について、不安を持っており、自分で意思決定を行い、自分から動くことに関して抵抗感を強く感じています。
<自分でできないことがあるとイライラする。>
こちらの選択肢を選んだ方は、行動の主体が自分で、成果をだす、やりきるということを掲げている人です。
そのため、失敗したり、上手くいかないというネガティブフィードバックがあったときに、自分自身の不甲斐なさに関してイライラします。
その気持ちが、課題は何か、どうすれば改善できるか、という成果を出すための方法について考えることにつながります。
課題発見や改善方法の模索は、「自分で何とかする」という気持ちからしか生まれません。他人に頼れば、何が問題で、どうすればよいか?ことを自分で考えなくても済みます。
先輩や上司が代わりに考えてくれるからです。
自分に対して、イライラしているということは、「自分が解決できるはずだ。」、「自分から動いて解決しなくてはいけない」という責任感の裏返しであり、非常に高いモチベーション、向上心、積極性を持って取り組めている証だといえるでしょう。
<自分の感情に振り回されないアドバイス>
業務に慣れていない時、知識や経験が不十分で「こうすればうまくいく」という成功への道筋が見えないのに、上司や先輩から「自分で考えろ」「課題は何だ?」「改善点は?」と詰められても...
それがわかっているのならば、今のような状況にはなっていない!と、過去に思った方も多いのではないでしょうか。
課題を指摘し、改善点を指示するのは、先輩や上司の仕事です。だからといって、上司から指示を与えられるのを待っているだけでは人は成長しません。
管理や育成、指示の責任は、上司や先輩にあるのと同時に、指導される側にも学習するという義務があります。
先輩の動きを見てよい部分を取り入れる、自分の動き方の違いを考えてみる、ここが原因だったのかもと後で考えてみる、こうすればよいのではないかと思考を巡らせる、それを心の中で考えなければいけません。
すると、その自分の考えと上司や先輩の指示を比較することで、自分の考えとのギャップがどんどん少なくなります。
そして、上司の考えと自分の考えにギャップがほぼなくなれば、あなたが一人前になった時といえるでしょう。
未熟な間は自分で解決しようとしなくとも構いませんが、先輩や上司の指示を理解したり、仕事の優先順位を整理、次はこうするだろうなと予想をつける、その思考の準備をしてから、上司や先輩の指示という正解を聞く、という学習をしていきましょう。
予習や復習をせずに答えだけを聞いても成長はしません。思考の主体性は、あなたが新人であってもやらなくてはいけないことといえます。
<成果・結果ではなく主体的な行動を評価する>
人材育成は段階を追って実践していくことが重要です。人材育成が進まない職場は最初から多くのことを求めます。社員に活気がないと嘆きつつも、何か発言すれば「考えてから発言しろ」や「何でも言えばいいものじゃない」と威圧する傾向があります。
まず社員に達成させたいことは何かという目的を1つに絞ることが重要です。目的を以下のように4つの段階に分けて、部下の能力に合わせて指導していきましょう。
1.自発的・自律的な行動をすればそれだけを褒める
仕事の成果の確認や、やり方に関する質問をしに来た時には、面倒がらずに「向上心があるね」、「丁寧にしようとしているね」と自発的な行動を褒めましょう。
この段階では、成果に関する質の指摘をしてはいけません。つまり、「〇〇を自発的にしてくれたようだけど、それでは、ダメだよ。仕事が粗い。」などは、良くありません。
目的は自発的な行動を今後も繰り返させることであり、これからも、自分から動くこと続けさせる。ということを意識させる言葉を使いましょう。
2.どんどん発言して行動に慣れていかすための指導をする
もちろん、その中で、ダメ出しや内容のレベルの低さに、呆れることもあるかもしれません。しかし、最初はこんなものだろう。とあまり質には期待せず、「今は質は気にしなくていいから、どんどん質問したり、確認するように!」と伝えましょう。
さらに、次の段階の指導についても言及しておきましょう。
例えば、「それができるようになれば、新しいことを教えるから。」というような指導のステップを互いに共有することを意識しましょう。
3.職場の変化をどんどん口にする
自発的な行動を数人の社員がするようになれば、「みんなが自分から動くようになってきている。」と思わせるように、社内や職場全体の変化を、口に出して評価するようにしましょう。
そうすることで、【自分で考え、自分から動く社員が多い。それは、当たり前である】というような社内風土を作っていきましょう。その人数が多ければ多いほど、自分で考え、自分から動くというのがあなたの職場にとっての当たり前となります。
4.全体的なレベルアップという目標を切り替える
自発的な思考や行動が当たり前になれば、ようやく、その質についての指導を目指していきましょう。
この段階では、自発的な行動をすることは当たり前という職場風土が根付いているので、行動の指摘やネガティブフィードバックをしても、それが委縮につながりにくい状態になっています。
そのため、自発的に行動したことを評価するうことも必要ですが、それ以上に、作業の質についての言及を強めるようにしていきましょう。
<やりがいを持たせていくためのヒント>
自発性というのは、成果と紐づけてはいけません。
なぜなら、発言や行動が多くなればなるほど、失敗のリスクが増えるからです。逆に言えば、指示に従う人間のほうが失敗のリスクは低くなります。
そのため、失敗した責任や行動の質とは別に、行動自体を評価するという成果評価と行動評価を別々に運用することが大切です。
例えば、自発的な行動をしているかどうかという行動評価として、「いろいろな挑戦をしているね。」と声をかけることでも良いでしょう。
そして、成果そのものに対する成果評価として、「〇〇さんは、今月は特に良い成績を出したね。」と声をかけることでも良いでしょう。
このように切り分けて運用することによって、失敗を繰り返しながらも行動を続け、質を高めようと努力する社員も報われる環境を作るようにしましょう。
この文化を促進するためには、以下の数値改善を目指すことが効果的となります。
- 上司や先輩に作業進捗・成果の確認をすることに抵抗がないか
- 上司や先輩に質問を気軽にできるか
- 上司や先輩に仕事の話を気軽にできるか
- わからないことがあればいつでも聞いたり、アドバイスを受けれる状況か
- 失敗をしたとき、トラブルが起きた時、上司や先輩が対処してくれるか
- ケアレスミスや確認ミス以外で失敗やミスの責任を取らされないか
あなたの会社で、このうちどれに取り組むかをリサーチし、人事評価に組み込むことによって、自発的に行動する人材を増やすためのマネジメントシステムを作ることができるでしょう。