活用事例

OJT教育は「現場に任せるのでコスト不要」と勘違いしていた企業事例

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OJT教育のコスト

「研修をしていない会社でも、実際は多額の教育コストがかかっている。」という事実を、あなたは知っていますか?

新入社員の入社直後は、仕事の仕方もわかりません。そのような未成熟な新入社員を使うために、先輩社員は指導業務をしたり、失敗に関してフォローしたり、手直し・修正などの業務を現場では行っています。これらの現場での育成をOJT教育と言います。

しかし、先輩社員がOJT教育に費やした時間が長ければ長いほど、先輩社員の生産性の低下してしまいます。

今回の事例でお伝えするのは、OJT教育で発生している2種類の潜在コストの計算方法です。

1つ目は、現場で指導している社員の時給×指導時間 = 現場教育時間コスト

2つ目は、指導している社員が生産時間を削られる = 生産力低下コスト

新入社員を採用するという事は、先輩社員の生産に充てる時間を減らし、教育や指導、新入社員へ指示する時間に割くということに他なりません。

つまり、研修や教育に時間をとっていない会社であっても、知らず知らずのうちに、生産力低下と言う形でコストを実は払っているということになります。

今回の記事をお読みいただければ、「新入社員が入ってくれば、どれだけ指導時間を増やさなければいけないのか?」、「新入社員が入ってくれば、どれだけ作業時間が削られるのか?」という、時間を失うことで発生している損失コストを計算した企業の事例がわかります。

当記事で紹介している会社の状況は以下の通りです。

<当ケースにおけるOJT教育の状況>

今回の記事内容は、98床の介護関連病院を運営している会社の事例を使って解説していきます。

介護業界では、複数の資格が存在し、コスト・採用競合の観点から専門的な知識と経験を持った人を採用することが難しいのが実情です。そのため、1人あたりの採用コストが高騰する一方で、採用人数が減っている課題に直面しています。

この会社の2つの人材マネジメント戦略

1.資格のない社員の育成:作業員としての採用

資格がない社員に対しては、人件費が安いことから、誰でもできるルーティンワークを与え、作業人員の確保と言う形で管理していました。

2.資格がある社員の育成: 中核社員としてのキャリア採用

資格がある社員に対しては、将来、事業所を管理・マネジメントを担ってもらう人材として、先輩から丁寧な指導・指示を受ける中核社員としてキャリアを設計されていました。

※:当ケースを分析するために活用しているデータはこちらからダウンロードすることが可能です。数値を見ながら、状況を分析することにご活用ください。

1.OJTの必要性とは?現場で指導すべき教育

人材育成に関して、結論から言えば、日常業務を離れて行う教育訓練であるOFF-JT(off-the-job-training)よりも、日常業務を通じた教育ON-JT(on-the-job-training)の方が効果は高くなります。

その理由は簡単で、実際の業務を通じて指導をするので、実践力が高いからです。そのため、OJT教育はどのような企業でも必要とされています。

では、OJT教育とOFF-JT教育では、どちら方がコストを安くできるでしょうか?

1-1. OJT教育とOFF-JT教育の違いとは?

OJT教育は先輩社員が業務を通じて、業務のコツや作業工程、気を付けなければいけない点について、1人1人付きっ切りで教えなければいけません。また「同じことを私は何回教えればいいんだ。」と言う責任者の不満もあるでしょう。

そういった理由から、「同じことを教えるならば、1度に多くの人数に、同じことを教えられる」Off-JT教育が重宝されているのです。

そのため、こちらのクライアント企業では、現場前配属前に集合研修を行い、現場配属後はOJT教育に切り替えることで、それぞれの役割を明確にしていました。

しかし、事前にOFF-JT教育として集合研修したにも関わらず、実際に現場に配属されてからの「先輩社員の管理負担が大きい。」、「指示やフォローに回らなければいけない時間が多く、自分の仕事時間が削られる」という課題も発生していました。

そのため、OJTコストとOFF-JTコストを比較する必要性があったのです。

1-2. OJT教育はコストがかかっていないと誤認識してしまう理由

上記の理由から、現場教育の中心は「先輩による指導」となることが多くなります。その場合、外部に研修を頼まないので、コストはかかっていないように思われるかもしれません。

Rableでは、OJTコストを以下の様に算出しています。

指導時間 × 指導担当者の時給 × 指導人数 = OJT教育コスト

例えば、OJT教育に120時間の指導が必要で、指導担当者が2500円の時給をもらっているならば、1人当たり30万円のOJTコストが発生しています。

なぜなら、新人の指導や教育、管理業務が無ければ、自分の業務に専念できたからです。あなたの会社でも新人の指導や管理が無ければ、自分の仕事を進めるために使うはずです。

つまり、OJT教育に頼ることは、先輩社員の業務時間を削ることを意味します。それは、生産性・稼働率の低下を意味し、よくよく考えると人件費の高騰と言う形で、研修を行っていない会社でもOJTコストを払っているということになるのです。

RABLEが提供している人材管理コストEXCELでは、これらの「新人の世話をしながら、自分の作業時間に割り当てている時間はどの程度なのか?」を比率で出し、「会社が知らず知らずのうちに支払っているOJT教育コスト」を計算できるようになっています。

2.OJTのデメリットをコスト視点で考えてみましょう。

ここまでで人材育成にコストをかけている意識がない会社でも、知らず知らずのうちに多額の教育コストを知らず知らずの内に支払っていることが分かったと思います。コストの視点から見れば、以下のような違いが発生し、OJTのデメリットを可視化できます。

Off-JT研修:10名の新入社員の教育に関して、教育担当者は1名でも実行可能です。 

OJT教育:10名を指導するために、10名の先輩指導者が必要となります。

しかしながら、OJT教育で10名を指導するために、ずっと10名の先輩が必要となるのか?と言えば、そうではありません。そのため、RABLEでは、OJTコストを計算する場合に3段階に分けてコストを算出しています。

※:以下の表のケースでは、採用人数は、資格なし:4人 資格あり:21人 新卒採用:10人となっており、各期間の教育期間は以下の通りです。

それぞれの教育期間は【1-指導しながら実行できる作業効率×時給=機会費用】として計算しています。

OJT教育コストの合計

OJT教育コストのグラフ

2.1 OJT教育コストステージ1:付きっ切り教育コスト

入社したての時期は、仕事の仕方もわからず、指示や指導がないと仕事を進めることができません。

どこに何があり、どの様な手順で、どこに気を付けて、どのようなスピード感で、業務をしなければいけないのか?の全てが何も知りません。そのため上司や先輩社員は、付きっ切りで指導する必要があります。

もちろん、指導者の勤務時間の全てを使って指導するわけではないでしょうが、初出社の新入社員が現場に入ってくれば、指導時間が増え、その日の先輩社員の生産力は大きく低下します。

このような費用をOJT教育コストのステージ1として、付きっ切り教育コストとして計算したものが以下の表となります。

OJT初期教育コスト

上記の表は、RABLEのテンプレートで自動生成される付きっ切り教育に関する機会費用コストの試算結果です。この表における【指導者教育時間】とは、付きっ切り指導時間に必要となった教育時間を意味し、【生産割当低下時間】は、指導をしている上司や先輩社員が生産活動をできなくなった時間を意味します。

これらの時間コストは、新入社員を採用すると必ず発生する教育時間コストです。しかし、新入社員の生産力をまったく当てにできないという訳ではありません。この会社では【新入社員労働力】は0.2人分として計上としています。

つまり、この会社では、新入社員は5分の1の労働力として見込んでいることが分かります。

しかし、新入社員に関して言えば、その労働力に見込まない給与を、ある程度の労働力として仕事ができるようになるまで、会社が支払う必要があります。上記の表では、そのコストを計上しているという訳です。

そして、1年間で入社した人数が合計35名ですから、仕事のやり方を教えるだけで、総額433万5005円も初期のÒJT教育に必要となっていたことがわかるようになりました。

2-2. 指示が無いと動けない期間からアドバイスや相談が必要な期間まで

仕事のやり方を教えても、給与が新入社員の働きぶりに見合うか?と言えば、そういう訳にはいきません。次のステップとして、残り2段階の教育期間が必要となります。

OJT中期教育コスト

指示が無いと動けない期間(指示必要期間):付きっ切り指導時間が終了した後は、指示がなければ何をして良いのかわからない状態へと移行します。指導側からすれば、自発的に動いて欲しいと思うかもしれませんが、仕事の全体の流れが把握できていない・業務状況を判断できない状態では、自律的に動くことは出来ません。なぜなら、何が正解か判断できる知識や経験が不足しているためです。

アドバイスや相談が必要な期間(相談必要期間): 自律的に動ける必要最低限の知識や経験を身につけても、「本当に間違っていないか?」と確信を持つまでには至りません。毎回「〇〇はどうしておけば良いですか?」など、最終の判断に迷ったり、上司の確認を必要とする場面が発生します。

上記の2つの期間であれば、自分の業務をこなしながら、片手間に新人指導をすることが可能になります。この会社では、1人の先輩社員につき、2人の新人がつくという体制ができています。

とはいっても、指導しながら自分の業務を進めるというのは非常に負荷がかかります。この会社では、教育コスト合計が436万2480円必要となっていました。つまり、その金額分の業務の遅れが発生していたことがわかります。

3.OJTの役割を明確にすればコストは削減可能です

ここまでの内容を見ていただければ、今までは計算してこなかったOJT教育コストには、どのようなコストが存在し、およそどれくらいの損失が発生しているかご理解いただけたでしょう。

では、ここからはOJT教育コストを削減するための目標設定方法をクライアント事例からお伝えしていきます。

3-1.OJT教育のコストを削減するためには、2つの方法があります。

  1. 指導担当者の人数を増やし、1人当たりの指導時間の負担を軽減する。
  2. 指導期間に目標を立て、指導期間を伸ばすのか?短くするのか?を判断する。

では、以下の表を参考にして考えていきましょう。

こちらから、デモ版(無料)をダウンロードしてみてください。以下で紹介している同じデータをEXCELで確認いただけますし、データを入力すればシュミレーションも可能です。

OJT教育負担

上記表を見ると指導担当者の人数と、指導目標期間の部分は黄色になっているのがわかります。ダウンロード頂いた方は、黄色のセルに数字を入力してください。すると、指導する上司や先輩社員の業務負担が、どの程度低くなるのか?がシミュレーションできます。

こちらの病院では、早く新人を育成したい!という考えから10名の指導者に、6ヶ月以内に全ての業務が出来るように指導するように指示していました。

現在の状態をシュミレーションに入力すると、指導月の生産割当低下率が32.92%という数値になりました。

つまり、8時間労働の内、2.4時間は指導時間となっており、自分の作業時間を失った分は残業で補っていたことも発覚したのです。結果的に、これが悪循環となり、指導担当者になりたい社員は少なく、キャリアアップを目指したい社員も減っていたのです。

この結果から、この病院の経営者は以下の3つの判断の間違いに気づくことが出来ました。

  1. 人手不足だから新入社員を出来るだけ採用して、現場の負担を軽減できたはずだ。
  2. 現場の指導力が悪く指導期間が長くなったのは、OJT教育が上手く機能してないためだ。
  3. 生産力が低下していたのは、現場管理者の責任で人数を増やせば解決されるはずだ。

つまり、頭数を増やすことだけを意識し、新入社員が入ったことで発生する現場の負担を考えていなかった。ということに気づいたのです。

3-2.OJT教育を改革するための目標設定の事例

では、最終的に、こちらの企業ではどのような改善プランを検討したのか見てみましょう。

OJT教育コスト改善

上記のシュミレーションは、指導担当者を15名に増やし、指導目標期間を12ヶ月に設定しています。

1つ目の改革点は、人材マネジメントの方針を、職場全体で新入社員を丁寧に育成しようという組織体制に改革する。ということです。

2つ目の改革点は、12ヶ月かけてじっくりと丁寧な指導を行うことで、質の高いOJT教育を達成するという方針へ転換する。ということです。

上記のような組織になれば、新入社員も職場の全員が丁寧で親身になって指導してくれているので、もっと早く覚えよう!と感じたり、この会社で働き続けたい!という感情も高まります。

また長期的な視点に立っているため、1ヶ月当りの業務負担が少なく、非常に現実的に達成可能な数値となり、先輩社員の生産力の低下も軽減できます。

【生産低下割当低下率】について、短期間で終わらせるべきか?長期かつ少ない比率で行うべきか?のどちらが効果的であるのかは、企業によって変化しますし、業種によっても変わることかもしれません。

しかし、具体的な組織体制となる指導人数を決めてから、目標となる指導期間を考えることで、新入社員が入ってきても、現場に負担が少なく、良い関係性の組織作りが出来るようになるでしょう。

まとめ

今回の企業事例では、実際のクライアント企業のデータをそのままではなく、少し数値を変えて紹介しています。

最後に、OJTコストを洗い出し、どこに無駄が発生していて、どのような組織体制で、どれくらいの目標期間で教育していくべきか?ということを考えれば、コストを削減できるだけでなく、働きやすい職場環境を作り上げることが可能となります。

しかし、今回の事例のように指導担当者を増やそう!と考えた場合にデメリットも発生します。

それは、指導担当者が増えるため、「あの上司は〇〇が正しい。」「この先輩社員は△△が正しい。」というように、指導する担当者によって、指導内容が変化してしまう場合があるということです。

また、悪しき慣習も引き継がれることがありますので、その点も注意しなければいけません。

今回の事例とさせていただいた、こちらの病院は、指導担当人数を増やし指導期間を長くすることで、生産力を低下させずに人材育成を達成するという方法を採用したことには理由があります。

より地域の皆さんに、安心できる介護病院として認知していってもらいたい。という願いと、新しい知識やノウハウを全スタッフに習得させたい。という願いがありました。そして、指導内容を誰が教えても同じことを教えられるように、OJT教育内容の見直しまでご依頼をいただいた事例です。

まずは、あなたの会社でも、どこに無駄なコストが発生しているのか?OJT教育は誰が担当するのか?という、具体的な指導方針を決定してみましょう。その結果、思ってもいなかったほどの大きな無駄コストを削減しながら、どのような方向へ組織を改革させるべきか?がわかるようになるでしょう。

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