当記事では、事前に退職しそうな社員を発見するためのRABLE式のノウハウをご紹介する。
退職面談ブログでも紹介しているが、退職しそうな部下を引き止め、人材の囲い込みを行うことは容易なことではない。
なぜなら、退職を願い出る時点で、もう結論は出てしまっているからだ。
このような課題を抱えているクライアント企業に対して、RABLEでは、事前にどの従業員やアルバイトが退職を考えているのか?どのような理由で退職を考えているのか?ということを、数値データを提供し、事前に対処することが出来ている。
実際に、私たちが従業員の退職動機の測定結果は、8割以上の確率で退職しそうな部下は誰か?そして、どのような理由で退職を考えているのか?ということをピンポイントで抜き出せることが出来ている。
その結果、退職の引き止めも成功させることができた。そしてそれは、一般社員だけの話ではなく、マネージャー層の退職を引き止めにも成功している。
リサーチでホンネを引き出すことは簡単な事ではないが、当ブログを通じて、誰もが実践できるように出来るノウハウを、できる限りわかりやすく注意点を書いていこうと思うので、是非、あなたの会社の助けになれば幸いだ。
1.社員の退職動機はアンケートツールを活用することで数値化できる
まず、アンケートツールを活用することのメリットを簡単にご紹介しておこう。
そのメリットは以下の3つだ。
- 間接的にヒアリングするので、従業員のホンネを引き出すことができる。
- 面談のように1人1人に時間をかける必要がない。
- 回答を集めれば、それらをデータ化し、数値として運用することが可能となる。
1-1.従業員の本音で引き出せる仕組みを作ることができる
下記の表は「退職面談が成功しない4つの原因とRABLE式のシンプルな解決方法」の記事から抜粋したものだが、下記の表から見ると、従業員は、会社(上司)にとって、都合の悪い話をしたがらないということがわかる。
会社(人事)に伝えた退職理由は、本音とは異なるものでしたか?
つまり、会社(上司)に課題を解決するための正しい情報があがってこなければ、問題を解決できないのは当たり前だ。
そこで「従業員アンケート」という直接的なものではない【間接的に意見をすくい上げるツール】を使うことにより、従業員の本音を聞き出すという事が可能となる。
詳しくは後で後述するが、アンケートの分析ノウハウを身につければ、その回答結果は「本音」なのか「建前」なのか?というデータの信頼性をも分析することが可能だ。
アンケートツールを効果的に運用すれば、「従業員の本音」という課題原因をポイントに抜き出し、数値に基づいた対処をすることが可能となる。
1-2. アンケートは非常に効率的で声の大きいマイノリティに流されないツール
また1人1人と面談して退職したい理由を聞き出すというのは非効率的だ。なぜなら、退職の決意が固まった従業員を引き止めようとしても成功しないからだ。そのような投資効果の悪いものに、多くの時間を割くというのは非効率的だといえる。
そして面談で得られた情報も本音なのか確かめようがないし、1人がある不満を言ったところで、他の社員も同じ不満を持っているかはわからない。
しかし、アンケートであれば、全ての従業員に対し、同じ質問で回答を集計することが出来る。つまり、様々な退職理由、不満原因がる中で、「どの従業員も共通してもっている箇所はどこか?」ということを特定できるのだ。
1-3.アンケートツールの最大のメリットはデータ化できること
最後に、アンケートの最大のメリットは、簡単にデータ化することができ、数値に基づく分析が可能であることだ。
データ化できるということは、「離職率(退職者数)と関係性が深いものは何か?」、「どういった不満が増えた時に、離職は発生するのか?」といった原因と結果の因果関係を数値で分析できるようになるということだ。
従業員に関する数値を作成することが出来れば、数値という客観的な指標に基づき、根拠を持ってマネジメントすることが出来る。自社管理が論理的、数量的にマネジメントできるようになるからこそ、自社の改善を実現し続けることができるようになるのだ。
では従業員心理という目には見えないモノを、一体どう上手くアンケートを設計すれば、マネジメントに活用できる数値へと昇華できるのか?
これから科学的な方法に基づいてアンケートツールを活用するノウハウをお伝えしていこう。
2.科学的なアンケートを作るために必要不可欠な3つのポイント
では単なる集計結果としてのアンケートではなく、科学的な尺度・測定ツールとして、アンケートを活用するには、どのような設計をしなくてはいけないのか?
精度の高いアンケートツールを作成するために必要な3つのポイントをお伝えする。
ポイント1:従業員のどのような心理を数値化するかを明確にする
1つ目のポイントは、必ずアンケートを実施する前に、そのアンケートを実施すれば、どのような情報、ヒント、発見が得られるのか?というアンケートの成果に対する見込みを必ず設計する。というものだ。
社内アンケートをしている会社の多くが、アンケート作成担当者の主観で項目が作成され、その集計結果を報告するという手順で実行されていることが多い。
しかし、マネジメントのプロたち(コンサルタントや研究者)は、まずはじめに必ずRQ(リサーチクエッション)を設計することを大切にしている。RQは基本的に2つだ。
RQ1:最終的な指標【離職・退職動機】が強い従業員にはどのような特徴があるのか?
RQ2:結果指標【離職・退職動機】が高まってしまうのにはどのような理由からか?
上記の2つのことを明らかにできれば、マネージャーが知りたいこと(離職しそうな社員は誰か?)を事前に把握でき、どの様な離職面談を行うことで、退職者を減らし、自社の離職率を下げ、人材の流出を防げるようになるのは当たり前だといえる。
なぜなら、実行に移す前に、【○○をすれば□□の結果が得られる】という成功の見込みが見えているからだ。
Rableでは、もう辞めたいと思っている“離職予備軍”を事前に察知する離職10項目と「離職につながる不満原因20項目」を特定することができた。
離職動機をアンケートで抜き出したい場合であれば、質問することは以下の内容となる。
- 「もう辞めたいと思っている社員」に共通する特徴は何か?
- 「離職につながる不満」にはどのようなものがあるのか?
それを数値化できれば、あなたの会社のマネジメントは以下の様に仕組み化できる。
- 離職動機の数値化が低い(アンケートの結果が悪かった社員)を特定できる。
- その従業員が最も不満に思っている項目を改善する面談、指導をする。
私たちの研究によって明らかになった、離職予備軍を測定するための10項目、その原因となる20項目に関しては、近日中に公開を予定しているので、是非楽しみにしておいてほしい。
ポイント2:従業員が本音で回答する工夫を徹底的に行う
アンケートで聞きたいことが明確にできれば、次は「いかにして本音で回答させるか?」という2つ目のポイントであるアンケート回答者との心理戦について考えていこう。
アンケートをそのまま実行するだけでは、正確なデータは上がってこない。なぜなら、「上司や同僚、職場、仕事内容に関する不満なんか正直に言ってもろくな事がない」と従業員の立場から考えれば、そう思ってしまうのは当たり前のことであるからだ。
しかし、そのようなアンケート回答の信頼性に関わる課題も工夫を凝らすことで、「誰もが本音で答えるしかない」と考えるように誘導することが可能だ。
例えば、私たちが従業員アンケートを実施する際には、以下のアナウンスをするようにしている。
ポイントは「あまりにも建前の回答をすれば罰が与えられる」という文章を入れている点だ。逆に、本音で回答している場合は何もしない。このような文章であれば「嘘をつくリスクよりも、正直に回答した方がマシ」と従業員の心理を誘導することが可能だ。
こうしたテクニックを駆使することによって、私たちは精度の高いデータを手に入れることが出来ている。
ポイント3:従業員アンケートは本音で回答されたのか確認すること
上記のような、従業員が本音で回答したくなる工夫を凝らしても、「実際に本音で回答したのかどうか?」は確かめてみなければわからない。
実はそのようなデータの信頼性も、エクセルの関数を使えば簡単に出すことが出来る。以下の表は【従業員が本音でアンケートに回答したのかわかる!データ分析の基礎知識】の記事で詳しく解説している、エクセルで作成したデータの信頼性に関する表だ。
項目数 | 除外項目 | α係数 |
---|---|---|
11 | 0.818 | |
10 | 11 | 0.802 |
10 | 10 | 0.837 |
9 | 4・10 | 0.841 |
α係数とは、回答の信頼性を指し示す指標であり、統計的には「0.72」を越えれば、測定尺度として活用できるという基準がある。α係数は高ければ高いほどいいという指標だ。
- 項目NO11を消すと、α係数は下がるので、項目NO11は良い項目と言える。
- 逆に項目10は消した方が、α係数は上がるので、項目NO10は良い項目と言えない。
この信頼性分析は、専門的な統計ソフトを購入しなくても、エクセルを使って素人でも簡単に分析することが可能だ。【本音でアンケートに回答したのかわかる!データ分析の基礎知識】の記事で詳しい関数の作り方を解説しているので、是非、参考にしてみて欲しい。
このように、従業員心理を数値化する方法は、すでに確立されていて、きちんとした手順を学びさえすれば、誰にでも、自社の課題、従業員・顧客心理や行動を数値化することができるようになる。
では最後に、退職予備軍を数値化することで、自社の離職マネジメントがどれほど、効果的に実行できるようになるのかについてお伝えしていこう。
3.数値に基づき退職者の引き止めを事前に効果的に行っていく4つの手順
アンケートで事前に従業員の心理を測定し、数値化することができていれば、退職予備軍に離職マネジメントを実行することが出来る。その手順は以下の様にして進めていく。
3-1 離職動機を数値化し退職予備軍を把握する
退職しようかどうか悩んでいる社員を抜き取るためのアンケートを実施して回答を集計できれば、以下の手順を行えば、離職動機という数値に加工することが出来る。
やり方は非常に簡単で、それぞれの回答データを足し算するだけだ。以下の表の様にアンケートデータの結果の合計得点を出そう。この場合、得点の高い従業員は離職リスクが高いということ結果となっている。
従業員1 | 従業員2 | 従業員3 | 従業員4 | |
---|---|---|---|---|
離職項目1 | 1 | 3 | 4 | 2 |
離職項目2 | 2 | 3 | 4 | 1 |
離職項目3 | 2 | 2 | 3 | 3 |
離職項目4 | 2 | 3 | 2 | 2 |
離職項目5 | 3 | 4 | 3 | 2 |
離職項目6 | 2 | 3 | 3 | 1 |
離職項目7 | 1 | 2 | 3 | 1 |
離職項目8 | 2 | 1 | 4 | 1 |
離職項目9 | 3 | 2 | 3 | 2 |
離職項目10 | 2 | 3 | 2 | 3 |
合計得点 | 20 | 26 | 31 | 18 |
3-2. 離職リスクの高い社員をランク付けして管理しやすくする
離職に関する数値を作ることができても、ただ数値が並んでいるだけでは、非常に利用しにくい。数字の羅列に抵抗感を示すマネージャーは非常に多い。一生懸命作成した数値を現場にフル活用して貰える工夫が必要となる。
また、私たちのクライアントでも実際に発生したのが、従業員が1から4の点数を見て、離職が加速してしまうという問題だ。情報が漏洩しないよう取り扱ったとしても、従業員に見られるリスクが存在するのだ。そのため、感情的に反応しないデータ加工はできるのらした方が無難だ。
そこで下記のように、Rableでは、それぞれの数値からAからDの表現に換算するようにしている。
そうすることで、現場マネージャーは、D評価のついた社員が離職しそうなんだな。と確認することが可能となり、仮に従業員が、このAからDの結果を見ても、ショックを受けることはなくなる。
3-3. Dランクがついた社員に対して不満を解消するマネジメントを実行する
あとは、上記の工程と同様に、離職予備軍となった従業員は、どのような不満を持っているのか?を項目から読み取り、その対処をしていくことが現場の仕事となる。
手順的にはD評価がついた不満項目に対して、面談や指導を行い、その従業員の不満を解消するか、従業員の認識をただす指導や指摘をするなどして、解決を図ろう。
いずれにせよ、数値化することが出来ていれば、現場がすることは「従業員の不満をヒアリングして解決策を模索すること」ではなく、「D評価がついた項目に対する指導をすること」と非常にシンプルな構造になる。
「上司やマネージャーは何をすれば、退職を防ぐことが出来るのか?」
「そしてその従業員には、どのような内容の指導が効果的なのか?」
課題発見から解決策の全てを現場に丸投げしていては解決できないのは当たり前だ。課題は数値でしか発見できない。
「従業員Aが不満に思っている課題はここだ。」と数値から課題を発見し、「数値から私は○○を指導すべきなんだな。」と客観的なマネジメントを出来るようになって初めて、課題の根幹部分にメスをいれることができるようになる。
3-4. 定期的に数値を取り、従業員満足度を高めること
数値を取る仕組みさえできればあとは簡単だ。定期的に数値をとり、誰が辞めそうなのか?という離職マネジメント対象の特定を行い、数値の変化を見ることで離職マネジメントの成果は上がっているのか?というマネジメント成果を評価することが出来る。
そういった数値での管理を繰り返すことで、上司からの指導方法の見直しや、理念教育のマニュアル作成まで行うことができるようになる。
つまり、退職理由の本音を引き出すことが出来れば、その本音部分を解決する指導方法や教育方法を設計することで、従業員満足度の高い企業を目指すことができるようになるのだ。
一番してはいけないのは「どこの会社でも人手不足だから」と市場や環境要因のせいにすることだ。どのような問題でも、改善に成功している会社は存在する。
まとめ: 退職者の引き止め成功率を高める離職マネジメントの進め方
退職理由の本音を聞き出すことの重要性とその活用方法について、当記事で紹介してきた。
改めて、以下の内容に注意して退職理由の本音を引き出すようにしていただきたい。
離職しそうな従業員を事前に察知できるツールを作成する3つのポイント
- 離職者に多い特徴と離職につながる不満はどのようなものがあるかをまず考える。
- 離職を考えている社員から本音を抜き出すアンケート設計について考える。
- アンケートを収集し、実際に本音を抜き取れたのかを確認する。
数値を活用した離職マネジメントの仕組みを作るために必要な4つの工程
- 作成したアンケートを活用して離職動機を数値化する
- 作成した数値を現場が活用しやすいように加工する
- 数値をみて対象者に効果的な離職マネジメントを実行する
- 定期的に離職マネジメントの成果が出ているかを確認し、修正する
当記事で紹介したデータ分析などに関しては難しいかもしれないが、従業員アンケートを実施し、退職理由の本音を引き出し、退職前に対処することに取り組むことはあなたの会社でも実行できるはずだ。
その仕組みを構築する事こそが、自社の人材管理能力を高める事に他ならない。
定期的に従業員の本音を引き出すアンケートを実施することで、どのような理由で退職してしまうのか?逆に、従業員は会社に何を求めているのか?という離職マネジメントが実現できるだろう。
退職理由の本音を引き出すアンケートを取るだけでも、離職者を減らし、あなたの会社の戦力を増やす事につながるだろう。